
2020ヴィンテージ
Covid-19で世界は大変な状況にありますが、そのような時に起こるビジネスこそ面白いと思っています。
例えばスマホというプラットフォームが世の中に登場したとき、以前のゲーム屋さんは沢山なくなり、ソーシャルゲームが一気に伸びました。
既存のゲームをスマホのフォーマットに置き換えるより、スマホでプレイするために作られたもの、つまりスマホがネイティブの状態で作られたゲームの方がUXが良く面白かったからでしょう。
今から始まるサービスは、Covid-19以降の時代の「ネイティブ」になります。
私の子供も今Googleクラスでリモート授業を受けていますが、やはり「学校で授業ができない期間の代替手段」の域を出ず、満足度はイマイチです。
普通に学校に通える前提で考えられたサービスよりも、世界中がロックダウンされた今の状況を理解して、今から立ち上がっていく教育系のベンチャーのほうが、より良いサービスを生み出せるのではないでしょうか。

したがって、今年はスタートアップが素晴らしい「ヴィンテージイヤー」になる可能性を秘めていると思います。
ワインにおける良質なブドウの収穫年をヴィンテージイヤーと言いますが、今年立ち上がってきたビジネスが「2020ヴィンテージ」と言われる未来がくるかもしれません。
9.11の直後には「みな飛行機に乗らなくなる」と言われましたが、その後LCCが産業として台頭しました。そのようなクライシスの際に苦しんで生み出されたビジネスが、今後上手くいくと思っています。
今後はレガシーな産業にもDXが起こる
これからも、あらゆる産業でDXは進んでいくでしょう。その中でも、よりレガシー度の高い領域が面白い土壌になると思います。
インターネットによって「DXされた」産業は端的に言って広告と金融です。ECも最初に出てきて、今ではどんどん展開していますし、デジタル配信だけで完結する動画や音楽コンテンツなどのエンタメもかなり進んできましたね。
反対に、インフラやヘルスケア、教育といった産業は、規制が厳しく、レガシー度合いが高いためにDXが遅れています。
そのような重たくて古く、規制や旧体勢力が強い産業でスタートアップが頑張るには、考え抜く必要があるでしょう。しかしこれら未開拓の産業ほど、DXによって劇的な変化を遂げることも考えられます。
比較的レガシー度の高い航空産業でLCCが生まれたのは、みんなが飛行機に乗らなくなると言われていた不遇の時でした。Covid-19以降の未来に向かって、レガシーな分野にもイノベーションを起こすような、新しいビジネスモデルが出てくることを期待しています。

プロフィール
蛯原健(えびはら・たけし)氏

シンガポール在住 東南アジア・インド特化ベンチャーキャピタル
リブライトパートナーズ 代表パートナー
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
1994年 横浜国立大学 経済卒、㈱ジャフコに入社。以来20年以上にわたり一貫しスタートアップの投資及び経営に携わる。2008年 独立系ベンチャーキャピタルとしてリブライトパートナーズ㈱を創業。
2013年 シンガポールに事業拠点を移し東南アジア投資を開始。2014年 バンガロールに常設チームを設置しインド投資を本格開始。近著: 『テクノロジー思考』ダイヤモンド社 https://t.co/8MraU0VhLQ
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